サンタクロースは君だった
 絵美里との電話を終えて、一連の放送が終わり、放心状態のひかりのスマートフォンが震えた。着信は実弥だった。

「も、もしもし。」
「ひかりさん、放送見ました?」
「見ました。」
「あ、声が泣いてない。じゃあ、思ってたより大丈夫な感じですか?」
「私は全然…。でも、レオくんが…。」
「レオは俺んちに住んでます。大丈夫です。ちゃんと食わせてるし、寝かせてるし。あ、添い寝はしてないですけど。」
「ふふ。ありがとうございます。ちゃんと食べて、寝てるなら…良かった。」
「ひかりさんのこと、無視してるわけじゃないです。…あいつの頭ん中はひかりさんばっかりですよ、ちゃんと。だからこそ、ひかりさんに連絡しないんです。今、必死でひかりさん断ちしてます。ひかりさんから電話きてるときはスマホ睨みつけてるし、メッセージの通知で少しだけ読める文面見ては開きたい欲と戦ってます。」
「…そうなんですね。じゃあ、読んでって言って下さい。既読スルーも気にしないからって。読んで、私がどれだけ心配したか知ってって、伝えてください。」
「はは、わかりました。ひかりさん、強いなぁ。」
「…待つ辛さ、これでもかってくらい教えてもらいました。たった2週間にも満たない時間でも、なかなか苦しかったです。レオくんは、これがずっとだったんですね。私、何も知らなかった。」

 たくさんの時間、レオは自分を待ってくれていた。再会するまで。再会してから。待つことは、そんなに楽しいことじゃない。大切な相手であればあるほど、きっと。

「6月3日は何の日でしょう?」
「簡単な問題ですよ、レオくんの誕生日です。」
「ひかりさん、さすがですね。大正解です。レオの男気、こうご期待。」
「…心配だけは、させてもらいたいと思います。」
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