ある雪の降る日私は運命の恋をする

朱鳥side2

今日は、楓摩も午前中は居てくれるらしくて少し嬉しい!

朝から、嫌な事はあったけど、まあ、もう苦しくないし、いいか。

それに、今はすっごく元気だし!

「朱鳥、今日は元気そうだね。」

「うん!すっごい元気!久しぶりに、怠くないかも!」

「おう、良かった。じゃあ、その調子でご飯もちゃんと食べろよ?」

ギクッ

そろそろ言われると思った。

だって、お腹空いてないんだもん!

でも、食べないとまた点滴されるのかな?

そんな事を考えていると、楓摩はいつの間にか、いなくなっていた。

あれ?どこいったのかな?

しばらくすると、ドアが開いた。

「朱鳥、ご飯持ってきたよ。ほら、ちゃんと食べな?元気な証拠見せてよ。食べないとまた、点滴だからねー。」

「むぅ……」

しょうがなく、ご飯を食べ進める。

昨日よりは、すんなり食べれたけど、それでも二分の一くらいしか食べられない…。

「もう無理……」

「これ以上食べたら吐く?」

コクン

流石に、これ以上は無理だ。

お腹が、そう言ってる。

「しょうがないな、今日はこのくらいで許してあげる。じゃあ、俺、これ片付けてくるね。あ、あとこの後点滴変えるから覚悟しといてね。」

「えっヤダ!」

「早いよ(笑)でも、嫌って言ってもやるからね。こればかりは、許してあげられないから。」

そう言うと、楓摩は病室を出ていった。

悪魔だ……

この病室に来てからは、嫌な事ばっかり!

いっぱい、点滴とか注射されるし……

もう、腕にもアザがいっぱい出来てるよ…

「朱鳥ー、心の準備できたー?」

「楓摩、早すぎ……」

さっき出ていってから5分も経ってないよ…

「だって、嫌な事は早めに終わらせた方がいいでしょ?」

「嫌な事は嫌だもん!」

「はいはい。じゃあ、早くやっちゃうから手出して?」

楓摩、人の話聞いてた?

今、嫌って言ったばっかりなのに!

「…やだ……」

「大丈夫だって、ちょっとチクッてするだけだから。ほら、すぐ終わるから早く手出して。」

楓摩も、なぜか少し怒っている。

怒りたいのはこっちだよ!

嫌なものは嫌なんだもん!

今までは、我慢してたけど、流石にこんなに続くと嫌になる……

「あーすーか。早くして。」

楓摩は、イライラした様子でせかしてくる。

「……やだもん…………嫌なんだもん…」

「はぁー……」

楓摩は、呆れた様子でため息を吐いた。

今まで、見た事のない楓摩の表情。

だって…だって……

点滴したら、また具合悪くなっちゃうんでしょ?

また、気持ち悪くなって、吐いちゃうんでしょ?

嫌だよ…だって、辛いもん。

目に涙が溜まってきて視界が滲む。

ベッドにポタポタと涙が落ちる。

「朱鳥、泣いてもだめ。やんなきゃいけない事は、やるんだから。ほら、手出すよ。」

そう言うと、楓摩は私の腕を掴んで、袖をまくった。

「嫌!!やだっ !」

必死で抵抗するが、やっぱり男の人の力には敵わない。

「ほーら、じっとして!もう、無理矢理でもやるからね!」

そう言うと、楓摩は、私の事を抑えて、無理矢理、点滴をした。

「……っ!!」

痛い……

楓摩は、私の気持なんてわからないんだ。

どうせ、病気にもなった事なんてなくて、入院もした事ないんでしょ?

だから、この辛さがわからないんだよっ!

「うわぁぁぁ……ヒック…グスッ…………楓摩のバカァ…あぁぁぁぁん。」

「……っ!!朱鳥……………………ごめん…」

「嫌……。1人にさせて…………」

そう言うと、楓摩は、悲しそうな顔をして病室を出ていった。
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