ある雪の降る日私は運命の恋をする
病室の中から、朱鳥の苦しそうな声が聞こえる。

「……んっ!!…たぃ……痛ぃよ…………」

「朱鳥ちゃん、頑張って!もう少し我慢して。そうじゃないとお薬も一緒に出ちゃうからね。」

アレは、昔、俺も一度だけやった事がある。

薬を入れたあと、だんだんお腹がグルグルしてきて、徐々にお腹が痛くなってくる。

トイレに行きたくても、5分ほど待たさせる。

そうじゃないと、やり直しだって言われるから、仕方なく我慢する。

5分くらいすると、中からホッとした様な声が聞こえた。


コンコンッ

「朱鳥、入るね。」

ガラッ

「朱鳥、出た?」

「…スッキリしたけど……、めっちゃお腹痛かった」

朱鳥は、ちょっと怒った様子でムスッとしていた。

「ごめんごめん。よく、頑張ったね」

そう言って、頭を撫でると、朱鳥は満更でもないような顔をしていた。

「朱鳥ちゃん、ちゃんと我慢してて偉かったですよ。ちょっと、泣きそうになっちゃってたけど、我慢できたもんね。」

「も、もうっ!萌歌さん、言わないでっ!」

朱鳥は、恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「いいじゃない。それに朱鳥ちゃん、そのイルカちゃん、とってもお気に入りみたいね、朱鳥ちゃん、が頑張って耐えている時は、いっつもそのイルカちゃん、ギューってしてるわよね。」

「だっ、だって…安心……するから。」

俺があげたイルカの抱き枕をそんなに気に入ってくれていたと思うと嬉しくて、心が暖かくなる。

可愛いな、朱鳥。

「じゃあ、朱鳥ちゃん、またね!私は、もう行きますね。あとは、お2人でごゆっくり。」

そういうと、橘さんは気を利かせて病室から出ていってくれた。
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