ある雪の降る日私は運命の恋をする

楓摩side2

午前中の外来を済ませ、朱鳥の病室へ向かう。

今日から朱鳥の治療が始まる。

この前よりも弱い薬で、一週間経過をみる。

病室に着くと、朱鳥は寝ていた。

副作用も出ていないみたいで、安心した。

それから俺は、午後に予定していた患者さんの検査や処置をしてから、その後、一度病棟へ行き、ナースステーションでカルテ整理をしていた。

すると、

~♪

ナースコールだ。

「清水先生、前苑さんからナースコールです。吐き気があるみたいで…」

「わかりました。今行きます。」

やっぱり出てきちゃったか……

吐き気止めの点滴と、一応、冷えピタと保冷剤を持って朱鳥の病室へ向かう。

コンコン

ガラッ

「朱鳥ー、大丈夫?」

「ゴホッ……ふぅ…………ま…ヒック………オエエ…………ゴホッ………」

病室に入ると、朱鳥は真っ青な顔で吐き続けていた。

しばらく、背中を摩って様子をみる。

だけど、全然止まりそうにない。

胃の中の物を全部出してしまったのか、もう胃酸しか出ていない。

「朱鳥、吐き気止めの点滴するね?」

コクコク

よっぽど辛いのか普段は嫌がる点滴もすんなりさせてくれた。

それから10分ほどして、ようやく吐き気が収まったようだ。

「朱鳥、辛かったね。大丈夫?」

「……ヒック…グスッ…………もう、やだぁ………ヒック…止めたぃ…………グスッ」

朱鳥は、泣きながらそう訴えてくる。

「ごめんね、治療はまだ一週間あるからさ。だって、今日始めたばっかりでしょ?辛いのはわかるけど、頑張ろ?俺もいるから。」

「……グスッ…………嫌なんだもん…ヒック…グスッ……」

「そんなに泣かないで?朱鳥が辛くなっちゃうよ?ほら、抱っこしてあげるから、泣き止んで?」

そう言って、点滴が抜けないようにして、朱鳥を抱っこする。

「グスッ…ヒック……」

最初のうちは、泣いていたが、ずっと背中をポンポンとしていると、いつの間にか、朱鳥は寝息を立てて寝ていた。

ベッドに寝かせて、布団を掛ける。

頬に涙の跡がいっぱいある。

やっぱり、治療は辛いよね。

でも、頑張ったら、きっと、その分、後で楽しい事が待ってるからね。

「頑張れ……」

そう言って、俺は病室を出た。
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