ある雪の降る日私は運命の恋をする
今日、俺は当直だ。

今日は、なぜか、いつもより急患が多く、休む暇もなく呼び出される。

やっと、一段落したのは午前3時だった。

一度、仮眠を摂ろうと思い、他の当直の看護師さんと先生に声を掛けてから仮眠室へ向かっていると……

「…………やぁ!!…ゲホッ……」

誰か叫んでる?

声の聞こえる方へ向かうと、朱鳥の病室だった。

病室に入ると、焦った様子の看護師さんと、叫んでいる朱鳥がいた。

点滴も取れちゃってる。

「あっ、清水先生!!朱鳥ちゃんが…」

「朱鳥、どうした?1回落ち着こ?」

泣き叫ぶ朱鳥に声を掛ける。

「やぁっ!!…ハァっ……ハァっ………ゲホッ…ゴホッ」

「朱鳥ー、俺だよ?楓摩だよー?大丈夫?」

「んー!!嫌ぁっ!!……ゴホッ…ゲホッ」

「すみません、安定剤持ってきてもらえますか?あと、外しちゃった点滴の変えも」

オロオロとしている看護師に指示を出す。

「は、はいっ!」

新人さんかな?

5分くらいすると、焦った様子で戻ってきた。

「安定剤と点滴、持ってきましたっ!!」

「ありがと。朱鳥ー、ちょっとチクッてするよ?」

「んーん!!やあっ!!」

そう言って暴れている朱鳥。

これじゃあ、打てないな…

「看護師さん、ちょっとだけ抑えてくれる?」

「えっ、あ、はいっ!」

「朱鳥ー、ちょっと我慢だよー」

安定剤を打つと、だんだん落ち着いてきたみたいだ。

「ありがと。あとは、俺がやっておくから、戻っていいよ。びっくりしたでしょ?朱鳥、パニックになると、稀にこうなっちゃうんだ。」

「すみません、私、焦っちゃって」

「いやいや、大丈夫だよ。でも、今度からこうなったら、すぐ俺を呼んでね」

「はい、わかりました。では、私はこれで。」

そう言って、看護師さんは病室を出ていった。

静かな病室で、ずっと涙を流している朱鳥。

「朱鳥ー、大丈夫?どうしたの?」

「……夢………………」

「そっか、また夢見ちゃったんだね…。もう、大丈夫だからね。よしよし。」

朱鳥を膝の上に乗せて、ギューと抱き締める。

「怖かったね。大丈夫、もう俺がいるからね。」

朱鳥は、しばらく泣いた後、そのまま俺の胸に顔を埋めたまんま眠りについた。

朱鳥を寝かせて、さっき受け取った変えの点滴を刺す。

朱鳥、少し熱いかな?

もしかしたら、熱があるかもしれないから熱を計る。

ピピピピピッ♪ピピピピピッ♪

38.5。

やっぱり熱あったか……

朝までに下がらなかったら解熱剤かな?

汗をかいている朱鳥の額をタオルで拭き、冷えピタだけを貼っておく。

良くなってるといいな。
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