ある雪の降る日私は運命の恋をする
午前中の外来も終わり、軽い昼食を採ってから朱鳥の病室へ向かう。

コンコンッ

ガラッ

「朱鳥ー、お昼ご飯食べたー?」

そう言って、朱鳥の手元のご飯を見ると、全く減っていない。

「あれ、朱鳥食べないの?」

「…お腹いっぱい……」

朱鳥は、そう言っているけどご飯は一口か二口分程しか減っていない。

「朱鳥、もうちょっと食べれない?それとも、具合悪い?」

ウウン

そう言って朱鳥は首を横に振る。

「どうしたの?」

「………………」

俺がそう言うと、朱鳥は黙って、目に涙を浮かべた。

それを見て、俺もビックリして、戸惑う。

「朱鳥?大丈夫?」

「………………」

依然として朱鳥は黙ったまま。

しかたなく、朱鳥の事を抱き上げて、抱っこする。

「どうした?朱鳥?」

そう言うと、朱鳥はすごく小さな声で

「………怖い…」

と一言だけ言った。

それを聞いて、俺は納得する。

きっと、検査が怖くて、緊張していて食欲が無いんだろう。

朱鳥の為だって、わかっているけど、こう泣かれると、やりたくなくなる。

それでも、検査はしないといけないんだけどね。

「ごめんね、朱鳥。怖いとは思うけど、朱鳥なら頑張れるでしょ?今までも、何回か頑張ってきたんだし、今日も頑張ろ?」

「………………」

「食べたくなかったら、もうこれ以上ご飯も食べなくていいし、夜ご飯ちゃんと食べれたら許してあげるからさ、その前に10分くらい、検査も頑張れないかな?頑張れたら、明日には家に帰れるよ?だから、頑張ろ?」

すると、朱鳥は少し、間をあけてからゆっくり コクン と頷いてくれた。

それを見て、俺は朱鳥の頭を撫でる。

「よし。じゃあ、嫌な事は先にやっちゃおっか。だから、このまま検査室に行ってもいい?」

……コクン

「うん。じゃあ、行こうね。」

そう言うと、朱鳥はさっきよりも強く俺を抱きしめた。

俺は、そのまま病室を出た。
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