ある雪の降る日私は運命の恋をする

楓摩side

「ただいまー」

仕事を終えて家に帰る。

玄関で靴を脱いでリビングに向かおうとすると、突然、ガタンッという大きな音が聞こえた。

音は寝室から聞こえた。

「朱鳥っ!!」

寝室に入ると、朱鳥は目に涙をいっぱい浮かべて床に倒れていた。

「朱鳥っ、大丈夫?どうした?」

「……ごめん…、楓摩。もう、大丈夫。ちょっと、目眩がしただけだから……」

目眩……

でも、目眩だけなら、なんで泣いてるんだよ…

「朱鳥、本当に大丈夫?我慢してない?」

そう聞いても

「大丈夫だよ……」

と言ってフイッと目を逸らしてしまう。

最近、見る事の多くなった朱鳥の悲しそうな、寂しそうな、我慢をしている顔。

「朱鳥、泣いてるじゃん……。なにが、大丈夫なの?我慢…………してない?」

根気強く、そうもう一度聞いてみる。

すると、朱鳥はポロポロと涙を流し始めた。

その涙は、次第に量が多くなっていった。

俺は、黙って朱鳥の事を抱きしめて、背中を摩った。

朱鳥、きっと、いろいろ我慢してたんだよな……

瀬川くん(弟)も言ってた、学校の事。

気付いてあげられなくて、ごめん……

我慢ばっかりさせて、ごめん……

ごめんね…朱鳥……
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