ある雪の降る日私は運命の恋をする

朱鳥side2

いつもと変わらない辛い日々。

別に大きな出来事はなく、ただ副作用に悩まされながらベッドの上でジッとしている。

1日のほとんどが寝ている状態。

でも寝てるのも辛くて、起きているのも辛い。

何をするにも辛い……

たまに、楓摩が来てくれるけど、その時くらいしか楽しみがない…

今も、ずっと吐き気がしていて、気持ち悪い。

吐き気はするのに、吐けないのが嫌だ……

目を瞑って、イルカの人形をギューッと抱きしめて我慢する。

こうしてると、普通に寝てるよりは、幾分か楽な気がした。

しばらく、そのまま耐えてウトウトとし始めた頃、病室のドアがノックされた。

コンコンッ

「はーい」

ガラッ

「前苑ー大丈夫か?」

「碧琉くん!?」

「よっ。兄貴にお願いして、見舞いに来た。体調大丈夫か?」

「うん。なんとかね。」

碧琉くんは、お見舞いだから といって、フルーツを持ってきてくれた。

「前苑、最近痩せた?」

「え?」

「なんか、細くなったな。…まあ、具合悪かったら食べ物も食べられないか。」

「…うん。」

すると、碧琉くんは、私の事を心配してくれたのか、少し心配そうな顔になった。

「前苑、フルーツなら食べれる?」

「うん。多分。」

「ん。わかった。じゃあ、今からりんご剥いてあげるから食べな?」

「ありがとう」

私が体を起こそうとすると

「辛いなら、寝てていいから。」

と言って、笑ってくれた。

お言葉に甘えて、寝っ転がったまま、碧琉くんの様子を見ていた。

碧琉は、器用にりんごの皮を剥いていく。

皮を剥いてから、私が食べやすいように小さく切ってくれた。

「はい。どーぞ。」

ひとくちサイズに切ってくれたりんごに爪楊枝を刺して渡してくれる。

私は、1個だけ口に含んだ。

「どう?」

「おいしい。ありがとう。」

そう言うと、碧琉も笑って、りんごを食べた。

2、3個食べた所で、少しだけしんどくなってきた。

すると、碧琉くんは気付いてくれたのか、少しだけ笑って

「辛いなら寝ていいよ。俺、もうちょいここにいるから。」

「……うん。ごめんね。」

「ううん。大丈夫。それより、自分の体のこと優先して?」

「うん。ありがとう。じゃあ、ちょっと寝るね。」

「おう」

私は、少しだけ笑ってから、目を瞑った。
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