ある雪の降る日私は運命の恋をする

楓摩side9

「もう、そろそろ外来の時間かな……」

本当は、このままずっと朱鳥と幸せな時間を過ごしていたい。

このまま時が止まってくれればいいのに……

そう、思ったがここは心を鬼にしないといけない。

朱鳥は、絶対に俺が守る。

その約束を果たすためにも、例え朱鳥の辛い顔を見るとしても、検査の結果は伝えないといけない。

「朱鳥…、じゃあ、そこの椅子に座ってくれる?」

「…………やっぱり、今じゃないと…ダメ……?」

「…うん。今じゃないと俺も言えなくなっちゃいそうで怖いんだ………。ごめんね……」

「そっか……、ごめんね、ワガママ言って……。」

やっぱり、朱鳥の辛そうな顔を見るのは胸が痛くて辛い……

それでも、これは朱鳥の為。

朱鳥の為。

朱鳥の…ため。

……やっぱり無理だよ…………

朱鳥の辛い顔なんて見たくない…!!

でも、でも……

「……朱鳥、もう1回だけギュッってしてもいい?」

「えっ?いいの?」

「うん、ギュッってしよ?」

「……うん。」

朱鳥を抱きしめて、朱鳥の温かさを感じる。

朱鳥……朱鳥…朱鳥!!

朱鳥を守りたい

守りたいからこそ、しなければいけないこと。

「ありがと、落ち着けた。じゃあ、今から話すね…」

「うん…」

きちんと椅子に座って、朱鳥の方を向き直す。

そして、俺はゆっくりと口を開いた。
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