雪解け花咲く
私たち二年生は教室が二階と三階に分かれていて二階は普通科、三階は理系という風に構成されている。私はもちろん普通科だ。理由は単に頭の悪さ、この一言に尽きる。
 テストは明日まであるので勉強で学校に残る生徒以外は当然帰るだろう。歩いて帰る者、自転車で帰る者、友達と帰る者、彼氏彼女と帰る者、皆が階段方向へ足を動かし、階段を下りていく。ただ一人、私を除いて。階段を一つ一つ上がる私の足取りは意外に軽い。自分で自分に驚く。自分のちっぽけな覚悟なんてすぐ折れるものだと思っていたのに、実は芯がしっかりしているという発見に感動する。
 「花、一緒に帰ろ」という元気な声を階段の上から発したのは、私の数少ない友達の菊谷友里だ。友里は身長が低く、声が高くて、毛先を少し巻いている、いわゆるふわふわ系女子である。本当だったら私が関わることのない人種だが、友里は違う。友里は裏表がなく何事もはっきり言う男前な性格だ、そこに私が惹かれて自然に一緒にいるようになった。
 「ごめん、友里。私今日ちょっと用事があるんだ。だから、先帰っといて」という私の声は自然に力が入る。
 「りょーかい。明日は帰ろうね! バイバイ」と言いながら元気に階段を下りていく友里に手を振りながら見送る。
「明日か。ごめんね、友里」
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