【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
「へぇ弓矢かぁ! いかにも精霊って感じだな!」

妙に納得しているカイは"うんうん"と腕組みをしながらガーラントの言葉に耳を傾けている。このアレスとは違う彼独特の着眼点は、根っからの剣士資質であることの表れかもしれない。

「では先生、精霊王は相手を選ぶということですか?」

「うむ。かつての王のなか、一度も顔を合せずにその生涯を終えた者もいるという噂じゃ。現精霊王については謎の多い御方であることは違いない」

「キュリオ様とは親交があるのですよね?」

すかさずアレスは大魔導師に問う。人見知りの彼がキュリオを尋ねてくるとあらば、精霊王のお眼鏡にかなったということになるからだ。

「そうじゃな。キュリオ様が王に即位してまもなく付き合いが始まったと聞く。運が良ければお主らも会えるかもしれんのぉ」

(親交があるといっても十数年に一度ほどしかお会いになられないなんて……やはり王ともなれば時間の感覚がまったく違うんだ)

そして人見知りである精霊王がキュリオを気に入る理由がなんとなくわかる気がしたアレスとカイ。それほどに他の王の癖が強いとわかった反面、自身の仕える王がますます誇らしくなり、思わず嬉しさが込み上げてくる。やがて"ほぉっほぉっほぉっ"と和やかなガーラントの声が響き、それがキュリオと精霊王の関係が良好であることを物語っている。
さらに姿を見ることが叶わずとも、見え隠れする偉大な千年王の存在が少しだけ近くに感じられた幼い少年たちだった。

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