【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
「それが難しいんじゃよ」

「王様の"加護の灯"があればヴァンパイアなんか目じゃねぇって! 門閉めて、灯を傍に置けばいいんじゃねぇのか?!」

意気込んだカイは吸血鬼の国の門でアレスを無理矢理引き込んだ女吸血鬼を思い出し、興奮気味に言い放つ。

「待ってカイ、きっと理由があるんだよ。……先生はなぜ無理だと思われるのですか?」

アレスは鼻息を荒くしたカイをなだめながら、冷静に大魔導師へと理由を問う。彼とて"加護の灯"の力を知らないはずはないからだ。

「"加護の灯"の力は儂もよく知っておる。たったひとつの羽だとしても、やはりキュリオ様の一部じゃからな。しかし、力の差の話ではないんじゃよ」

「……力の差の話ではない?」

大魔導師の考えが読めないでいるアレスとカイは訝し気に表情を曇らせている。

「キュリオ様の"加護の灯"でさえ、何もしておらぬヴァンパイアを裁くことはできん。それにやつらは化けることができるんじゃ。悠久でもたまに見かけるじゃろ? #蝙蝠__ニュクテリス__#はもちろん、容姿や瞳の色を変えて普通の人間の姿になるなどお手のもんじゃ」

「え……ヴァンパイアはそんなことができるのですか……?」

ガーラントの言う"難しい"の意味を知り、ふたりはにわかに動揺をみせる。防ぎようのない彼らの侵入を今までどれだけの悠久の王が心を痛めてきたのだろう。昔のように捕食されることがなくなったのはいいが、それでも吸血鬼のいいようにされるのはどんなに辛かったか……。

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