【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
「……うむ。やつらの命が儂らより遥かに長いのは知っておるな?」

「はい、そのくらいは……」

これ以上何を聞かされるのだろうとふたりの少年は緊張に息を飲んだ。

「悠久の民の生血を得て、生き長らえておるヴァンパイアたちをキュリオ様が快く思うはずがない。しかしじゃな……この世界に共に生きる者としてヴァンパイアを全否定するわけにもいかん。共存という立場をとりながらも、なんとも難しい問題なんじゃよ」

「だな……。でも! 指をくわえて見てるだけってのは俺は嫌だぜ! 弱いやつは守ってやらねぇとな!!」

永遠に続くであろう二ヵ国の睨み合いにも真っ直ぐなカイは使命感に燃え強く拳を握りしめた。

「そうじゃな。幸いにも悠久の王は<慈悲の王>。あの万能な治癒の能力はこの国になくてはならないお力なのじゃ。死者を蘇生させることはできぬが、瀕死の者ならば助けることもできる。そしてそのような者を出さぬためにもお主らの力が必要なんじゃよ」

ふたりへにこやかな視線を送りながら、期待の眼差しを注ぐガーラント。ただ力を高めるだけではない、さらに上へ行くためには目的が大事なのだと彼にはわかっている。

「儂もまだ隠居するつもりはないがアレス、カイ。ふたりともキュリオ様を支える立派な魔導師・剣士になるんじゃぞ! すべては"キュリオ様のお心のままに"じゃ!!」

「おうっ!!!」

「はい!」

カイの威勢のよい返事に笑いながら、アレスは楽しそうなガーラントの様子を見てこう思った。

(先生はキュリオ様のことが大好きなんだろうな。キュリオ様のお心を理解した上で誰よりも信じているんだ……)

いつかキュリオやガーラント、カイたちとそういう仲になれたら……と幼心に憧れの想いを抱いたアレスの夜だった――。
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