会いたい
涙を拭いて、必死に笑顔を作る。

「MAKIDAIさん…今は自分の治療に専念して下さい」

楓の健気さが伝わる。

「いや、楓さんにまで怪我させて、本当に申し訳ない」

「私は、大丈夫ですから」

「そんなに泣かれたら、ほっとけないよ」

MAKIDAIが困ったような顔をするので楓は慌てて、

「…もう…MAKIDAIさんの前では泣きません」

そう言った。

「楓さんは、明日スタッフが付き添って帰ることになったよ」

と工藤が報告すると、

「そうなんだ。俺もここじゃあ世話して貰うにも大変だから、東京の病院に移れるように頼んだよ」

「そうか、助かるよ」

MAKIDAIと工藤がそんな会話をしていると、

「ねぇ、工藤くん達もう食事は済んだの?美味しいいくらがあるんだけど、一緒にどう?大輔にと思って買って来たんだけど…」

MAKIDAIの母親が話しかけてきた。

「そうそう、さすがの俺も今はちょっとね」

MAKIDAIの呆れ顔に父親も同情の様子。

「だって、せっかく北海道に来たんだし、大ちゃんイクラ大好きだし、早く元気になってもらわないと」

MAKIDAIの母親のマイペースぶりで場が和む。

「楓さん、俺の両親です」

二人は、紹介されるとにっこり微笑んで会釈した。

「あの、すみませんっ、ご挨拶もせず、私、MAKIDAIさんに仕事でお世話なってます、楓といいます」

楓も慌てて立ち上がり頭をさげる。
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