会いたい
「うん」

「MAKIDAIさんと過ごす時間が、増えれば増えるほど幸せで、これ以上のことを望んだらいけないし、これで十分幸せって思ってたんです。…MAKIDAIさんの言う通り、私は、シングルマザーだし、迷惑掛けたくないから」

MAKIDAIは、少し暗い表情になった。

「でも、MAKIDAIさんに大切な存在だって言って貰えて、私、…グスッ…バチが当たったんです」

楓は涙でそれ以上話せなくなった。

MAKIDAIは、楓の手をグッと握り返す。

「事故は、誰のせいでもない。それに楓さんがシングルマザーだからダメなんて俺は思ってない」

楓は、首を大きく振って、

「…MAKIDAIさんにはもっとふさわしい人が…」

「それは、…俺が決めることだから。…俺は、楓さんがシングルになった理由が分からないし、色々苦労してるんじゃないかとか、俺が楓さんをちゃんと支えてあげれるのか、そういうことが心配で…」

MAKIDAIにそんな風に思って貰えているとは楓にとって全くの予想外なことだった。

「…出会う前から、いつもMAKIDAIさんが私の心の支えです」

MAKIDAIは、痛みを堪えながら手を伸ばし、楓の涙を指で拭う。

「これからはもっと近くで支えてあげたいんだ。乗り越えて行かなきゃいけない問題も沢山あると思うけど、楓さんとなら、きっと乗り越えられると思う」

「MAKIDAIさん…グスッ」

楓の涙は止まらない。

MAKIDAIは、身動きが取れない自分がもどかしかった。

「楓さん、もう泣かないで。俺の前で泣かないって言ってたじゃん?」

MAKIDAIは、楓の涙には弱いようだ。

「うん…でも、MAKIDAIさんが泣かせることばかりいうから…」

「そっか、ゴメン。でもさ、楓さんが泣いてばかりいると、心配で治療に専念できないかも…」

MAKIDAIは、子供をあやすかのようにそう言った。

楓は、涙を拭き一生懸命息を整える。

「そうだ、おまじない…してくれる?」

MAKIDAIは、そう言ってニヤっとした。

「…おまじないって?」

楓が不思議そうな顔をすると、MAKIDAIは目を閉じて頬を楓の方にむける。

楓は、その意味に気付くと、恥ずかしそうにしながら、

「早く、元気になって下さいね」

と言って素早く頬にキスした。

MAKIDAIは、満足そうに笑って、

「早く良くなって、復帰一発目で楓さんに貰ったネクタイつけてテレビ出るよ」

「はい。約束ですよ」

二人は、事故がきっかけで絆も深まりお互いの気持ちを知ることが出来た。
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