神様修行はじめます! 其の五
 次の日の朝、あたしは制服姿で家を出た。


 もちろん学校に行くつもりなんて、毛頭ございません。この恰好は、ただのカモフラージュです。


 今日は門川君と水園さんの探索をするんだ。なんとしてでも今日中に見つけ出してやる。


 そして往復ビンタの大量発生をお見舞いしてやるんだ! 待ってろ門川君!


 素知らぬふりで「いってきまーす」なんて言いながら、いつもより早めに家を出て、皆が待ってる屋敷へ直行した。


 正門の石畳を抜けて正面玄関を通ると、側面の大窓から差し込む朝の光が障子越しに廊下に映って、影模様を作っている。


 クッキリとした濃い線がまるで墨絵のようで、思わず立ち止まって見惚れてしまった。


 すごい芸術性だなぁ。日本家屋って、こんな細かな部分まで計算されて建築されてるのかな?


「みんな、おはよう。夕べはよく休め……た……?」


 朝の挨拶をしながら勢いよく襖を開けたあたしは、そこで口をパッカリ開いて目を丸くしてしまった。


「おはよう、アマンダ」

「おはようございます。天内さん」


 昨日、みんなでご飯を食べた広い和室の畳の上に、お岩さんと凍雨くんが座ってこっちを見ている。


 それはいい。それはべつにいいんだけど……


 その、2人の恰好が……


 セ、セーラー服と、学生服姿なんですけどおぉぉ――――!?


「なになにー!? なにその恰好、どうしたの――!?」


「うふふ、どう!? すっごく似合ってますでしょう!?」


「天内さん! ボクは!? ボクも似合ってますか!?」


 スックと立ち上がった2人はその場でクルリと回り、自分たちの姿を嬉しそうに誇示している。


 お岩さんは紺色の襟にラインが2本入った、夏定番の白セーラースタイル。


 凍雨くんは白い半袖シャツに黒パンツという、これも定番の純な中学生スタイル。


 普段の恰好とのギャップがありすぎて、えらい衝撃的!


 頬を染めてポーズまで決めてるところが、妙な背徳感漂っちゃって、ヤバめに感じるのはあたしの気のせいですか!?
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