神様修行はじめます! 其の五
いつの間にか周囲は、血の池になっていた。
黒とも赤ともつかない、ただ暗い色のドロリとした大きな血の池の中に、体が否応なしにズブズブ沈んでいく。
死と絶望を意味するこの血は、死んでいった者たちが流した血。
こんなにたくさん、まるで海と見まごうばかりに、途方もない血が神の一族の歴史の中で流れ続けてきたのか。
『他人事か?』
濃厚な血に喘ぐあたしの目の前がどぷりと波立って、血まみれの顔がニュッと浮き上がる。
『これは、お前が救えずに死んでいった者たちの血なのだぞ?』
どぷり。どぷり。どぷり――
次々と血まみれの顔が血の池から浮き上がり、あたしをグルリと取り囲んだ。
よく見知った彼らは、底の深い真っ黒い穴みたいな恨みの眼で、あたしをジーッと刺すように見つめている。
あれは門川君のお兄さん。そして秋風さん。奥方。お岩さんのお父さん。
雛型の、たまきさん。常世島の長さん。戌亥。蛟の長老。信子長老……。
あぁ、みんな、死んでしまったね。
血も、希望も、未来もなにもかもすべてを奪い尽くされて、あなたたちは殺されていったね。
そしてあたしは、生きるんだ。
自分が生きるために、こんなにもたくさんの人が死んで、なのにあたしはなにも成し得ていない。
この先、なにかを成し得る保証すらない。
世界は他者を犠牲にし続けて、こんなにも無価値な自分が延々と生き残り続けなければならない、地獄。
果てない地獄の只中に、あたしは囚われてしまった。
『囚われた? なにを勝手な』
ニィッと、血濡れた顔の奥方が笑った。
『お前が自分で望んだのだろう? この地獄の道を』
黒とも赤ともつかない、ただ暗い色のドロリとした大きな血の池の中に、体が否応なしにズブズブ沈んでいく。
死と絶望を意味するこの血は、死んでいった者たちが流した血。
こんなにたくさん、まるで海と見まごうばかりに、途方もない血が神の一族の歴史の中で流れ続けてきたのか。
『他人事か?』
濃厚な血に喘ぐあたしの目の前がどぷりと波立って、血まみれの顔がニュッと浮き上がる。
『これは、お前が救えずに死んでいった者たちの血なのだぞ?』
どぷり。どぷり。どぷり――
次々と血まみれの顔が血の池から浮き上がり、あたしをグルリと取り囲んだ。
よく見知った彼らは、底の深い真っ黒い穴みたいな恨みの眼で、あたしをジーッと刺すように見つめている。
あれは門川君のお兄さん。そして秋風さん。奥方。お岩さんのお父さん。
雛型の、たまきさん。常世島の長さん。戌亥。蛟の長老。信子長老……。
あぁ、みんな、死んでしまったね。
血も、希望も、未来もなにもかもすべてを奪い尽くされて、あなたたちは殺されていったね。
そしてあたしは、生きるんだ。
自分が生きるために、こんなにもたくさんの人が死んで、なのにあたしはなにも成し得ていない。
この先、なにかを成し得る保証すらない。
世界は他者を犠牲にし続けて、こんなにも無価値な自分が延々と生き残り続けなければならない、地獄。
果てない地獄の只中に、あたしは囚われてしまった。
『囚われた? なにを勝手な』
ニィッと、血濡れた顔の奥方が笑った。
『お前が自分で望んだのだろう? この地獄の道を』