神様修行はじめます! 其の五
「天内君。僕の目指す未来は、途方もなく困難な道の遥か先にある。だから、たどり着くことはできないかもしれない」


 真昼の月を見上げたまま、門川君があたしに語りかける。


「それでも僕は夢物語を諦めたくないんだ。自分の中の尊い願いを、自分で否定することなど絶対にできない」


 そして彼は、月からあたしに視線を移す。


「だから僕は、なにがあろうとキミを絶対に離さない」


 澄んだ瞳の奥に見える、その迷いのない意思に向かって、あたしは答えた。


「うん。あたしも、なにがあってもあなたを絶対に離さない」


 あたし達の願いは、こうしてお互いに届いた。


 だからこれからもずっとずっと、尽きぬ夢路を共に歩もう。



 あたしは絹糸を抱き上げて、しま子とまた向き合った。


 言葉もなく見つめ合うあたし達の間には、一輪の花。


 決して尽きることのない美しい花がある。


 あたし達は、それぞれの夢を目指して、みんな一緒にここまでたどり着いたのだから……


 ここからまた、それぞれの諦めきれない願いを抱えて、みんな一緒に歩いていくんだ。


 大丈夫だよ。なにも心配ない。


 あたしの肩を抱き寄せる愛しい人が……


 気高く誇り高い神獣が……


 心優しく純粋な赤鬼が……


 道の途中で出会った友が、こうして前に進む力を与えてくれるから。



「天内君、僕達は大丈夫だ。僕達はそばにいれば……」


「うん。無敵、だね!!」




 そして青く広がる空に、月。


 届かぬはずの願いを叶えた、遥か彼方の真昼の月が、


 果てぬ夢路を目指し続ける旅人たちを、静かに見守っていた……――。




  【END】
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