不思議に不思議な彼女と僕


「自分の気持ちを伝えた分だけ、人は強くなるんですよ。だから、強くなってくださいね若者よ」


そう言って笑った彼女の顔が、またあの人と重なって胸が痛む。


「その“若者よ”ってセリフ、なんだか昔っぽいですよね。もしかして、実は相当年食ってるんじゃないですか」


ツキツキする痛みを誤魔化すようにそう言うと、彼女はすかさず脳天にチョップをおみまいしてきた。


「痛っ!!何するんですか」

「失礼な方への鉄拳制裁です。女性に対するマナーがなっていません」


いつの間にか胸の痛みが、頭の痛みに上書きされる。

どうしてこうこの人は、口より先に手が出るのだろう。

痛む頭を押さえて視線で抗議してみたら、彼女は何が可笑しかったのか突然ふふっと口元を押さえて笑った。

彼女が笑うたび、その顔があの人と重なって胸が痛くなる。

でもそれも、きっともうすぐ終わるのだろう。

悔しいけれど、なんだかとってもしゃくだけれど、誰かに重ねることなく、ただ真っ直ぐに彼女の笑顔を見てみたいと、いつの間にかそう思ってしまった。

でも今はまだ、心の中であの人の姿が鮮やかすぎるから。

ひとまずは、この想いを乗り越えるところから、始めてみようと思う。

いつか、新しい恋をする、その時の為に――。
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