不思議に不思議な彼女と僕
目の前で、まるで壊れ物を扱うようにそっとアクリル板から取り出したものが、彼女によって開いた手の上にのせられる。
彼女の手が離れていくと、途端に頼りなげに揺れ始めたそれを、思わず掴んでしまった。
大輪の花を咲かせる、黄色いひまわりの絵に縁どられた便箋。
「あなたはいつも、ほんの一瞬だけここで足を止めていましたね。でもいつまで経っても絶対に手に取ろうとはしない。“今はまだ、見ているだけでもいい”とは確かに言いましたが、このままではいけないと考え直しまして」
顔を上げると、彼女が朗らかに笑っている。
「誰かが余計なお世話を焼いて、背中を押してあげることも必要な時があるのではないかと思いました。だから、受け取ってもらえて良かったです」
役目を終えてホッとしたような、どこか嬉しそうな彼女の顔。
ついに受け取ってしまった便箋で、どうやら長年厳重に鍵をかけて胸の奥にしまっておいた気持ちを、伝えなければいけないらしい。
どう考えても今更すぎるし、あの人の気持ちも答えもとっくにわかりきっているのだけれど。
それでも目の前の彼女は、名前も年齢も何も教えてはくれないこの不思議な人は、柔らかくそっと背中を押す。