ハミングバード
 光吉は自分の覚えている限りの
歌を口笛で吹いた。
 無心で吹いているので買い物の
行き帰りに子供達が真似をして口
笛を吹いているのも気がつかな
かった。
 そしていつの間にか口笛おじさ
んとして知られるようになってい
た。
 光吉の知っている歌は昔のもの
ばかりでそんなに多くなかったの
で、自分で曲を作り始めた。
 最初はどこかで聴いたことのあ
るようなものから、しだいに自分
の曲らしいものが出来るように
なった。 
 新しい曲を歩きながら吹いてい
ると、子供達や通りすがりの人が
ものめずらしそうに光吉の口笛を
聴いた。
 さすがに子供達には真似ができ
ない。でも何日かすると子供達も
同じ曲を吹くようになった。
 光吉の曲は覚えやすく、親しみ
やすかった。
 やがて子供達の間で口笛が広ま
り、学校でも登下校の時に口笛を
吹いていれば防犯になると考え、
口笛が上達するように小学校で口
笛大会をすることになった。
 ある日、光吉の家に小学校の先
生が尋ねて来て、子供達から光吉
の口笛の話しを聞き、口笛大会の
審査員になって欲しいと頼んだ。
 光吉は断ったが、何度も説得さ
れてしかたなく引き受けることに
した。
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