君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



「やめて……」


きゆは心から追い出したはずの不安の固まりが、瑛太の言葉によって、また心に忍び寄るのが分かった。


「勝手な事言わないで…
色々あったけど、たくさん話をして、お互い納得したの。
先生は私と結婚するってちゃんと言ってくれてる…

だから、瑛太は余計な心配はしなくていいの… 大丈夫だから…」


きゆは泣きそうになる自分の弱さを抑えつけ、瑛太を見て余裕のある笑顔を浮かべた。


「きゆ…
俺じゃダメ?…」


瑛太はさっきの顔つきとは真逆の、切なさに満ちた物悲しい顔をしている。


「瑛太……」


きゆがそう言った途端、瑛太はきゆを抱きしめた。


「あいつの事は諦めてよ…
俺が、あいつ以上に、きゆを幸せにするから」


きゆは優しくでもはっきりと首を横に振った。


「瑛太、ごめん…
きっと、私は、先生じゃないと幸せになれないの…

瑛太だって分かってるでしょ?
流人先生はあんなだけど、誰よりも誠実で嘘はつかない人だって。
この島に来た理由は不誠実かもしれないけど、でも、ここでの生活や仕事ぶりは、誰よりも真面目で島の皆の事を想ってる。

下手したら、私とかよりも、瑛太とかよりも、深く想ってくれてる」


瑛太は静かにきゆを離した。



「あいつにフラれたら俺がもらってやる…
それは覚えといて…」






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