君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



きゆが廊下の窓を拭いていると、後ろの方で流人の声がした。
振り返ると、流人は院長室の横にある洗面台の前で立ち尽くしてる。


「おはよう。
今日、すっごくいい天気だよ。

流人先生、今日一日、頑張ろうね」


きゆがそう言うと、流人は白衣のポケットからスマホを取り出し、きゆの写真を撮り出した。


「ちょっと、流ちゃん、どうしたの?」


流人は満面の笑みを浮かべ、興奮気味にきゆに話し始める。


「きゆ、その白衣、すごくいい!
もう、俺、朝っぱらから鼻血が出るかと思ったよ~~

ちょっと、ちゃんと見せてみ~

俺、コスプレでもいいから、いつかはきゆにこんな格好してもらいたかったんだ。

もう、最高、めっちゃ可愛い、ブラボー!!」


きゆは苦笑いをした。
確かに、きゆ自身、この白衣には抵抗があった。
初日にこの病院を訪れた時には、院長の奥様によってもう用意されていた。
ひと昔前の、看護婦さんの頃の白衣……

白地のウエストが絞っている膝上丈のワンピース、そして、時代とともに消えたはずの真っ白い可愛らしい三角帽。

東京の病院ではパンツスタイルの白衣を着ていたし、髪は手術の時以外は一つに結ぶか、ピンで留めるかのスタイルだった。

この島は、時間が止まっている。
しかし、その事によって、喜びはしゃぐ人間がいるとは思いもしなかった……




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