君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



「もう、そんな子供みたいにはしゃいでバカじゃないの?」


きゆは、大切な初日の日に、こんなくだらない事ではしゃぐ流人に嫌気がさした。
これでも、本当に、お医者様なの??
流人に限っていえば、こんな風に思ってしまうシチュエーションがたくさんあり過ぎる。

流人は歯ブラシを口にくわえたまま、スマホに収めたきゆの画像をスワイプして何度も見ていた。


「きゆ、俺はこの島に来て本当に良かったよ……

空気は美味しいし、風景は最高に綺麗だし、人は皆温かいし、それに、きゆのコスプレが毎日見れるなんて…

もう、俺、泣きそう……」


きゆは何も言わずにその場を去った。
もう相手をするだけ疲れるのは、長い付き合いで分かっている。

きゆは受付のカウンターに座り、今日の予定をチェックした。午前は通常の診察業務で、午後からは老健施設の健康診断が入っている。

流人にとって、こんなのんびりした仕事は考えられないだろう。
いつも分刻みで仕事をこなしてきた人だから。

でも、どうやってこの島に来る事ができたのだろう…
流人の生活が少し落ち着いたら、その話を聞いてみよう。


「きゆ、ここの患者さんのカルテを見せて」




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