君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



きゆは流人の愛情に満ちた優しい言葉に、逆に息苦しくなった。
今のきゆは、心と、身体と、頭が、それぞれバラバラに主張してくる不安定な状態だったから。

心は愛していると叫びたがって、頭はダメだとつき離す、そして、身体は、流人の温もりをいつまでたっても忘れらずにいた…


「でも、俺は、誰にも何に対しても遠慮はしないから…
それはきゆに対してもそうだし、俺の親に対しても、もちろん、遠慮はしない。

何度も言うけど、俺にとって、誰がどうのなんか全く関係ない。

俺にとって一番大切なのはきゆの気持ちだけで、きゆが俺の事を好きでいてくれないと、俺自身どうしていいのか分からなくなる。

俺の世界はきゆで廻ってるんだ。

だから、きゆの世界も俺が廻す。
俺がいないと死んでしまうくらいにさせてやる」


流人は今までの重い話と暗い空気をもう忘れたかのように、普段通りに当たり前にきゆを抱きしめる。

きゆは、強引で俺様で、でも寂しがりな流人の性格を誰よりも分かっていた。


「流ちゃん……
この一年はさ、この島で楽しく過ごそう…

そして、一年が過ぎる頃に、もう一回ちゃんと話そう。
その時に、二人の気持ちがどうなのか、もう一回、ちゃんと、ね?」


流人は不満そうに、でも大げさに頷いた。
今はこれ以上、きゆを苦しめたくなかったから。






< 65 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop