君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
流人は病院から出て2時間経った今でも、まだ本田の家に辿り着けずにいた。
海沿いの主要道路は難なく超えることはできた。でも、案の定、山の中を抜ける細い道は水浸しのぐちゃぐちゃの状態だ。
横に迫る崖は、木々がたくさん生えているせいと真っ暗闇のおかげで、何が何だかさっぱり分からない。逆に、その状況に流人は助けられた。見えないものには恐怖を感じないお気楽な性格だったから。
流人は何度もぬかるみに嵌まり、そのぬかるみを避けながら進んでいると、森の奥深くに迷い込んでしまった。
とにかく、来た道を戻ればどうにかなる。
流人が進んできた道はヘッドライトに照らし出され、ぬかるみにできたタイヤ痕のおかげで、どうにかいつもの道に辿り着いた。
ここからは躊躇している暇はない。ぬかるみがあろうが進むしかなかった。
きっとあと少しで着くという自分の動物的勘を信じて、流人は猛スピードで前へと車を走らせた。
やっと、本田の家へ続く舗装された道路に出てきた。でも、その道路は海沿いの険しい場所にある。
流人は、以前は遠くに聞こえていた波の音が、間近に聞こえる恐怖に身を震わせ、スピードを上げ本田の家へと向かった。