御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
「こないだ届いたサンプルを持ってってお願いした料理研究家から今日、レシピが届くんです。それを見て売り込みの方向性を決定するから、届いたらチームと課長の分、鈴木さんにコピーをお願いしたいです」

仕事の時の丁寧な口調に、私の朝の悩みなんて吹っ飛んでく。

「はい。届いたらすぐにコピーして皆さんにお渡しします」


きっと、これも私の気持ちを分かって。変に意識しないで済むようにって気遣いだろう。ホント、敵わない。



昨夜もキスの後、係長は私をとても気遣ってくれた。

自覚したばかりの自分の気持ちを話そうとする私を遮って、静かに言ったのだ。

「今夜は何も言わないで。今は俺の生い立ちを聞いて同情もしてると思うんだ。香奈美さんが同情してないって言っても、俺はきっと疑ってしまう。
だからさ、今夜は何にも言わないでよ。俺はもう、香奈美さんが泣いてくれただけで満たされたから」

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