L'eau, je suis important...





俺が親に捨てられて困っていたときも、龍さんが声をかけてくれて、こうして、仕事をもらっている。


正直、龍さんたちは家政夫なんて必要ない。


麗華さんは家事はもちろん、何でもできる。


でも、龍さんは優しいから。

“仕事”という形で俺に居場所を作ってくれた。



龍さんから仕事をもらってなかったら、俺は、学校はもちろん、家賃すら払えてなかった。



「悠太くん。
そろそろお夕飯の支度してもらってもいいかしら?
涼太くんもこれから帰ってくるそうだから。」


今日は珍しく涼太が早く帰ってくるんだな。

涼太は基本的に夜中にならないと帰ってこない。


炎龍っていう暴走族に入ってるから、夜は仲間と一緒に過ごして帰ってくるんだと、前に言っていた。



「もちろんです。
今日は何を作ればいいですか?」


いつもリクエストにあわせて作っている。
ここの冷蔵庫には常に材料が揃っているから、何でも作れる。



「そうねぇ。涼太くんの好きなオムライスをお願いできるかしら?」


おっとりした口調で言った麗華さん。

纏っている雰囲気は、舞羽と同じほわほわした優しい雰囲気だ。
でも、麗華さんはそれだけじゃない。ほわっとして何も考えてないように見えて、相手をよく観察している。

例えば、龍さんに敵意を持った人が麗華さんに近づいたとする。
相手がいくら隠しても麗華さんはそれに気づく。そのくらいの観察力を持った人だ。



麗華さんのことを考えながらも、涼太のことを思った。

そういえば、涼太はオムライスが好きだったな。



「はい。わかりました。」




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