Merry Christmas or Me ?

 私と、さっきまでこの部屋にいた彼の間に〝愛〟なんてものは微塵もない。かと言って友情やら信頼関係やら、そういうものもあるわけでもなく。ただ、同じ会社で働いていたというだけの関係である私と彼は、ホテルに行く時は大体割り勘だ。

 たったの一瞬だけでも、心の穴を埋めてもらえるのなら、私はそれで良かった。それに、彼には彼女がいるのだ。そんな決められた恋人がいる人にお金をすべて出してもらえるほど、ある意味私は女らしくもなかった。

 クリスマスに寂しい思いをしたくなくて、私自身が指定したこのホテル。そのホテルの最上階にある暗めな照明がお洒落な雰囲気を醸し出すこの部屋は、少々値が張った。

 こんな素敵な部屋に来たって、彼はすぐに彼女の元に帰ってしまうし、結局一人。また私は、虚しくて空っぽになってしまう。

 彼といても、空いてしまった心の穴が埋まるのはたったの一瞬だけ。

 いや、実際のところは一瞬も埋まっていないのかもしれない。ああ、私、ちゃんと求められてる。ああ、ぽっかりと空いた穴が埋まっている気がする。という錯覚を起こしているだけに他ならない。


「……あ、」

 ぼうっと外を眺め続けていた私の前に、ふわりと白い丸が降りていく。

 はっとした私が窓の向こうに視線を泳がせると、またふわりと白い丸が視界を遮った。

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