Merry Christmas or Me ?
「Merry Christmas or Me ?」


「ごめん、そろそろ帰るわ」

 私のすぐ横に寝転がっていた細身の男が突然立ち上がった。彼は、緩めていたネクタイを器用に結び直すと、素っ気なく私に背を向ける。

「うん、分かった」

「じゃあ、またな」

「うん」

 あまりにもあっさりしすぎている私達の別れ際だが、それもそのはず。私と彼は、付き合っているわけでもなければ好き合っているわけでもない。

 付き合って数年が経つ彼女との関係がマンネリ化し、身体の関係も〝レス〟だという彼と、元彼と別れて半年が経とうとしているが未だ埋まらない穴を埋めてほしい私。

 私達はただ、お互いに都合良く利用し合っているだけの関係だ。

 私は、はだけたシャツのボタンを上から順に止めていく。そして、ベッドから足を下ろした。

 ベッドから足を下ろした私は、窓際まで足を運ぶと、その大きな窓から見下ろすことのできる大きな湖と街にともる光を眺めた。

「……綺麗」

 見下ろす街は、いつもより艶やかで、眩しくて、幸せそうにたくさんの光を灯している。

 ───今日は、12月25日。

 世間はクリスマス一色だというこんな日に、どうして私はこんなに素敵で大きな部屋に一人でいるのだろうか、なんてふと我に返って、私は自分自身がおかしく思えた。

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