副社長とふたり暮らし=愛育される日々
黙り込んで思案していると、私が困っていると思ったのか、海都くんは申し訳なさそうな笑みを見せて再び謝る。


「ごめんなさい、俺いろんな人と関わりたくて、すぐ声かけちゃうんです。次の仕事に繋げるためにも、人脈を作っておきたくて。こうやってまた仕事させてもらえたのも、何かの縁だと思うし」


しっかりとした口調の彼の言葉を聞いて、私は一瞬誘われていることを忘れ、別のことで関心してしまった。

海都くんのようにモデルで活躍している人は、自ら道を切り開いているのだ。何も努力せずに仕事が見つかるほど、この世界は甘くない。

私みたいに運良く拾ってもらえて、今も続けさせてもらえているのはとても稀なこと。自分はとても幸運な人間なのだと思うと同時に、それでいいのか?とも思う。

なんとなく好きで、家計の足しになるからというだけでモデルをやっている私は、精一杯この仕事をしている人に対して失礼なんじゃないだろうか。

自分を改めたい気持ちになり始めていた時、海都くんはポリポリと頭を掻いて、さっきの続きを口にする。


「あー……もっともらしいこと言ったけど、それは建て前で、ただりらさんと仲良くなりたいだけだったりするんだけど」


ちょっぴりはにかんで正直に言う彼が可愛らしくて、私もクスッと笑いをこぼした。

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