副社長とふたり暮らし=愛育される日々
その表情が、声が、あまりにも色っぽくセクシーで。私の心臓は大きくジャンプした。

あぁ……私、なんて高レベルなお方を相手にしてしまったんだろう。初心者なのに、一流講師が受け持つ上級コースに飛び込んでしまったような気分。

こんなに魅力的な人に恋愛の基礎を教えてもらうなんて、この身の程知らずめ……。

ちょっぴり後悔にも似た気持ちで顔を俯かせると、副社長の手が頬から頭に移動する。


「疲れただろ。とりあえず今日は寝ろ」


ぽんぽんと頭を叩き、優しく声をかけて腰を上げる彼につられて、私も顔を上げた。

確かに早く寝たいけど、ひとつだけ聞いておきたくて、彼を呼び止める。


「あの、副社長はどうして、私のことを……」


“好きなんですか?”と直球では恥ずかしくて聞けるわけもなく、言葉を濁す。顔が赤くなっていくのがわかり、振り向いた彼の顔も見れない。


「私、地味だし可愛いげないし、バカみたいに恋愛経験なさすぎだし、副社長にお似合いな人はもっとほかにいるのに」


劣等感丸だしだけど、本当にわからないから。なんで、私なの?

唇を噛んで返事を待っていると、彼は柔らかな笑みを浮かべる。


「そんなの気にすることじゃない。俺はお前を愛してる──その事実がすべてだ」


しっかりと告白されて、私は今日最後の衝撃で倒れそうになった。

私を好きな理由は、いまいち謎めいたままだけれど、確かなことがひとつ。

彼の愛は、とてつもなく甘い。




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