副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「誰に何を吹き込まれたか知らないが、俺はお前を利用してたつもりなんて毛頭ないからな」


ほんの少し怒ったような声色で言われ、ドキリとした。

きっと私が、『ただMimiを宣伝するためだけに必要な、都合の良い女なんじゃないんですか?』と言ってしまったからだ。

そんな疑惑はもうどうでも良くなっていたけれど、やっぱり否定してくれるとほっとする。


「もう疑ってません」


ぎゅっとシャツを握り、爽やかな香りの胸の中でくぐもった声を出すと、彼はふっと笑いをこぼした。そして、私の髪を優しく撫でながら言う。


「オーディションの時から気になってはいたけど、瑞香を推したのは本当にモデルの素質があると思ったからだ。撮影になると人が変わったみたいに堂々とする姿とか、頑張り屋でウブなところとか、お前が魅力的で惹かれていったのも事実だから」


朔也さん、ちゃんと私の内面を好きになってくれたんだ……。そう実感して、またひとつ自分に自信が持てた気がした。

私はこの人が好きで、この人は私が好き。そういう見えないものを信じる勇気が、自信に繋がるのかもしれない。

顔を上げると、十数センチの距離で薄茶色の綺麗な瞳と視線が絡まる。


「俺は、お前を心底愛してるよ」


形の良い唇が、私に言い聞かせるように甘い声を紡いだ。なんだか泣きたくなるような、優しく熱い想いが込み上げる。


「私も、大好きです」


迷いなく答えてお互いに微笑むと、自然と唇を寄せ合った。


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