副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「やっぱりいないよね……」


本当にお化け屋敷みたいな、祖父母が若い時に建てた古いわが家を見つめながら、落胆して呟いた。


お兄ちゃんは、今年の始め頃から突然家に帰ってこなくなった。『仕事で急に海外に行くことになった』と、申し訳なさそうに電話で伝えて。

たしかに、彼の職場は海外にも支社があるけれど、『俺の部署は海外出張はほとんどない』と以前言っていたから、私は最初から怪しいなと思っていた。

それからも時々連絡は来るから、とりあえずどこかで生きていることはわかる。でも、詳しいことは何も教えてくれないし、いつ帰れるかもわからないと言うのだ。そんな謎の出張があるだろうか。

それに何より、お兄ちゃんは自分がちょっと外泊する時ですら、『こんなボロい家で、瑞香ひとりで留守番させるのは心配だ』とまで言っていた。

それほど大切にしてくれていた私を置いてどこかへ行くなんて、何かあったと思わずにはいられない。


彼がいなくなって、もうすぐ一年が経とうとしている。その間に、タイミングを見計らったように家は劣化してくるし、たったひとりの家族への心配も大きくなる。

それに……この家で、いつ帰ってくるかわからない人をひとりで待っているのは、寂しさが募るばかり。

お兄ちゃんは仕事が忙しくても、私の誕生日だけは絶対に帰ってきてくれていたのに。

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