副社長とふたり暮らし=愛育される日々
そこには、もうふざけたサンタクロースはいなくて。

いつ見ても麗しいお顔の、大人の色香を漂わせる男性が微笑んでいた。


「こんばんは、りら。ユーフォリックモード取締役副社長の御影だ」


改まって挨拶をする副社長。彼がなぜ私の家を知っていてやって来たのか、謎だし驚愕したけど、もうひとつ驚くべきことがある。

副社長……今“りら”って言ったよね?

メイクもしていない、ウィッグもつけていない素の私を見て、どうして気づいたの!?


「んなっ、なななん、で……!?」


両手で顔を覆い、口をぱくぱくさせて動揺しまくる私。すると、副社長の整った顔が、少し傾けながらこちらに近づいてくる。

えぇぇ、何……っ!?

伏し目がちな色っぽい表情が接近し、とっさに肩をすくめた私は、ぎゅっと目をつぶった。

首のあたりに気配を感じた瞬間、彼はすうっと息を吸い込む。ドキンドキンと大きく脈打つ心臓を押さえていると、すぐに気配は離れていった。

ゆっくり開いた私の目には、得意げな表情の副社長が映る。


「今、プランタンアムールをつけてるだろ。あの時と同じ香りだ」

「は……」


今のは匂いを確かめたのだとわかり、気の抜けた声を漏らした。

キ……キスされるかと思った自分、天に召されてほしい!

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