副社長とふたり暮らし=愛育される日々
お互いに黙って数秒見つめ合ったあと、私は何も言わずにぴしゃっと扉を閉めた。

だ、誰!? いったいなんの用!?

混乱したまま、なんとなく背にした扉を開かれないよう押さえていると、外から落ち着いた声が聞こえてくる。


「おい、開けろ」

「帰ってください! 悪徳商法ならお断りです!」


ぎゅっと眉根を寄せて叫ぶけれど、扉の向こうから聞こえてくる声は相変わらず平静さを保っている。


「そんな悪趣味なことはしない」

「その格好で知らない人の家に来る時点で十分悪趣味です!」


きっぱり言い返すと、「はははっ」と無邪気に笑う声がして、少し肩の力が抜ける。


「なんだ、サンタクロース信じてないじゃないか」


……え? どういうこと?

微かに聞こえてきたひと言に反応して、私は思わず後ろを振り返った。

すりガラスの向こうに見える人影は何やら動いていて、三角の赤い帽子を取っているようだ。そして、少し真面目な口調になって言う。


「知らない人じゃないぞ。お前は忘れてるかもしれないが、俺は覚えてる」


そういえば、この声、どこかで……。

頭に引っかかってすぐ、この滑らかな声が誰のものか思い当たり、まさか!?と息を呑む。半信半疑だけれど、慌ててもう一度引き戸を開けた。

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