副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「今日は、明智さんは一緒じゃないんですね」


私の発言に、副社長は一瞬キョトンとしてこちらを振り向き、「え?」と間が抜けた声を漏らす。


「あ……明智さんが秘書だとしたら、行動を共にするものなのかなと思って」


この間の撮影の時、ふたりが一緒にいたことが印象深くて、なんとなく思ったのだ。

見た感じ、副社長も仕事帰りっぽいけど、明智さんが通勤の運転手を務めたりしないんだろうか。

副社長は、私の言いたいことを理解したように、「あぁ」と小さく頷く。


「そう、明智は秘書で送迎もしてくれるが、今日はさすがにいないよ。なんでプライベートまであいつと一緒にいなきゃいけないんだ」


彼は軽く笑いながら言うけれど、私はプライベートという響きにドキリとしてしまう。これは御影副社長直々に行っていることなのだと、改めて認識させられたようで。

ケーキをくれたことも、これから食事に行くことも──誕生日をひとりで過ごさせないでくれることも。全部、彼の意思で私のためにしてくれているのだ。

その理由はまだわからないけれど、心が温かくなってくるのは確かに感じる。

やけにキラキラと輝いて見える、雨に濡れる街を眺めていると、副社長はちらりと私を一瞥し、こんなことを言う。

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