副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「素敵なお部屋……! 私、こういう高級マンションに憧れてたんです!」


窓の外には宝石を散りばめたような夜景が広がり、明るくて広い部屋に、一度でいいから住んでみたいと思っていた。

大きな窓に近づき、そっとカーテンを開いて外を眺め、感嘆の声を上げる私に、後ろから副社長が歩み寄る。


「ずっといてもいいけど?」


──耳の上から甘い囁き声が響き、ドキン!と大きく心臓が跳ねた。

ぱっと振り向けば、ダークブラウンの前髪がかかる切れ長の瞳が、私に流し目を向けていて、さらに心拍数が上がる。

“ずっといてもいい”……ですと!? あ、甘い!

この調子だと今彼女はいないんだろうけど、冗談だというのは十分わかっている。

わかっているのに、口をパクパクさせてあからさまに動揺してしまう。顔も赤くなっているだろうし、まさに金魚のよう。


すると、彼の瞳がちょっぴりいたずらっぽく変化し、「なんてな」と軽く笑って離れていく。私は人知れず大きく息を吐き出して脱力した。

もう、私こういうの慣れていないんだからやめてほしい……。本気になんてしないけどさ。

気を取り直してリビングダイニングに目を向けると、コートを脱いだ副社長がネクタイを緩めている。その仕草は当然ながらカッコよくて、思わず見惚れてしまう。

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