副社長とふたり暮らし=愛育される日々
えっ、まさか本当に抱きしめられる──!?

ギョッとしたのもつかの間、肩を掴んだ彼にくるりと身体の向きを変えられ、どんどんドアのほうへ押される。

副社長はガチャリとそのドアを開け、寝室らしき部屋に困惑したままの私を押し込んだ。


「俺に襲われたくなかったら早く寝ろ」

「へ!? ちょ、私まだ髪乾かしてな──」


バタン!と勢い良く閉められた扉を見たまま、私は固まった。

何、今の。まさか、本当に私を抱きしめたくなったわけじゃない、よね?


「……猫フェチ……」


ボソッと呟き、今の副社長の動揺っぷりを振り返ると、面白すぎてじわじわと笑いが込み上げてくる。

そんなに猫が好きだったなんて! 今日泊めてもらうお礼は悶えるほど可愛い猫の何かにして、彼を悶絶させようか。

意外すぎる一面にクスクス笑いながら、何気なく部屋の中に目をやると、ひとつの大きなベッドが飛び込んでくる。その瞬間、私は笑っている場合ではないと気づいた。

ここで寝ろということは……副社長が寝る場所がないじゃない!


「副社長!」


慌ててドアを開けると、すでにネクタイを取り、鎖骨を露わにした彼が、手首のワイシャツのボタンを外そうとしているところだった。

おぉっと、お色気シーン。

セクシーな姿にドキッとしたものの、何も気にしていないフリをして言う。

< 69 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop