謎解きソルフェージュ
炎天下で聞き込みのさなか、倒れたのだ。
長年コンビを組んでいた間山警部補と長時間歩き回り、

「川さん、そろそろ一息いれないか」
「なぁに、まだまだ、そろそろ何か掴めそうなんだ」

そんなやりとりを交わしていたそうだ。

直接の死因は脳出血だったが、原因は明らかに過労だった。
救急車で運ばれ、混濁した意識のなかで最期に口にした言葉は、
「・・・ホシを発見・・・確保にむかいま・・・・」
であったと聞かされて、母は間山警部補にとりすがった。

「間山さん、うちの人は、主人は、ホシを捕まえられたんでしょうか?」
その最期に。

目を真っ赤にし、食いしばった歯のあいだから、間山警部補が声をしぼりだす。
「奥さん、あいつは、あいつは———きっと・っ・・」

間山警部補の慟哭と、母の嗚咽が病院の廊下に響いた。
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