謎解きソルフェージュ
第三章/交換は等価



「———だからプライドを捨てて、外部に協力を依頼している、か」
泉がつぶやく。


炎天下、重い荷物を運び、さらに事件のあらましと捜査状況をなるべく整理してしゃべりつづけた鞠子は、のどがカラカラだ。
茶の一杯も出てきそうにないのが恨めしい。

「お役に立てたならいいのですが」
せいぜい皮肉をこめて言ってみる。

うん、ありがと、と短く返ってくる。なんの含みもなさそうな声だ。柳に風である。

「きみはどう思う?」
不意にこちらに視線をぴたりと向けて問うてきた。彼の視線に色がついていたら、レーザー光線のようにまっすぐ自分の瞳をとらえているだろう。

「どう、とおっしゃいますと・・・?」

「この事件に対するきみの見解は?」

———なんの見解もなかった。
捜査のプロである警察官が総力をあげた結果以上のことを、資料を読んだだけの素人の自分がどうやって指摘できるというのか。
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