純情シンデレラ
私はハァとため息をつくと、シャンと椅子から立ち上がった。
つられるように、松本さんもスクッと立ち上がる。
あぁ、またこの人を見上げないといけなくなった・・・。

「訂正がないようなので、フロッピーを渡しておきます」
「分かった」

私がさっき入力をした最新版データがちゃんと保存されていることを、二人で確認した上で、フロッピーを松本さんに渡した。

「おつかれさん。気をつけて帰るんだぞ」
「はい。おつかれさまでした」と挨拶をした私に、松本さんが少し近づいた。

そして「趣味は程々にな」と、囁くような小声で私に言うと、クルッと踵を返してスタスタと歩いて行ってしまった。

えっ!?な・・・なに、今の。
私の心臓はドキドキ跳ね上がっているというのに、松本さんの歩く後姿は、いつものように堂々としてる・・・っていうのが癪に障る!

私は、営業のみなさんにお出しした飲み物の湯呑を集めるために歩き回ることで、さっきの鬱憤を晴らし、給湯室で湯呑を洗う作業をすることで、徐々にいつもの平常心を取り戻していった。

そのとき、営業の石狩さんが、慌てて給湯室に入ってきた。

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