純情シンデレラ
出入口のすぐそばにある郵便受けを見ると、「301 松本」と書かれている。
他に「3」から始まる部屋番号がないということは、松本さんちは3階か・・って、上野課長もそう言ってたじゃない!

私は、またうるさくなり始めた鼓動をなだめるように、心臓があるあたりを右手でそっと抑えると、2・3度軽く、深呼吸をした。 

・・・食事を渡すだけ。そう。それだけ。
あとは、松本さんが本当に元気なのかどうか、怪我が本当にひどくないのか確かめる。

意を決した私は、階段を上り始めた。

やっぱりここ、エレベーターがない。
階段の数はそれほど多くないし、急でもない。
それでも、今の松本さんの状態だったら、不便な想いをしてるかもしれないと思ったら、怯みかけた私の想いも、階段を1段ずつ上るたびに、少しずつ消えていった。

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