純情シンデレラ
松本さんは「大したことない。軽い怪我だ」というような言い方をしていた。
会社だって、明日は出社すると言ってたし。
でもその後、上野課長からかかってきた電話で、「仕事は4・5日くらい休むことになるんじゃないか」と聞かされて。
居ても立ってもいられない気持ちになってしまったけど、ひとまず一晩待って、明日・・今日行こうって・・・。

私、決めたじゃない。

たぶん松本さんは、買い物にも行けないだろうと思って、すぐ食べられるお弁当と、作り置きできるおかずを数品、持ってきたんだから・・・お父さんとお母さんにも「松本さんちにお見舞いに行ってくる」って言った手前、せめてこれだけは渡しておかなきゃ。

今度は落ち着きを取り戻すように、深い深呼吸を一度した私は、両手で持っていたトートバッグを、左手だけに持ち替えた。
そして、人さし指でずり落ちていないメガネのフレームを持ち上げると、松本さんが住んでいるアパートの階段―――ついさっき、姫路さんが降りてきたところ―――へ、歩いて行った。

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