純情シンデレラ
「ご令嬢、また来たのね。朝はそのままどっか行ってたのに。もう来なくていいよ!」と憤慨しながら言った素子さんは、ハァとため息をついた。

「なんで松本さんはあんな女とつき合ってるのかなぁ。根っからの真面目野郎故に断れない事情でもあるのかしら」
「おいおい。それじゃあまるで、出(いずる)がご令嬢に手を出したような言い方じゃないか。あいつはそんな男じゃないよ」
「あ・・そうよね。松本さんは剛さんの友だちでもあるのに」

「酷い言い方してごめんなさい」と謝る素子さんに、宇都宮さんは「いいよ」と言いながらニッコリ笑った。

「それに、出はご令嬢とつき合ってないって。モトちゃんがさっき言ったように、出は根っからの真面目野郎だからさ、あれがあいつなりの“言い寄られて迷惑してるんだ”という表現の仕方なんだよ。モトちゃんも、出がご令嬢から受けた数々の迷惑な話を見聞きしてるだろ?」
「そうだけど・・・。なんか、真面目過ぎるのも考えものよね。あの態度は吉どころか、返って凶と出てるようにしか思えない」
「確かにそうだな。あいつ、世渡りは上手な方だが、不器用だから。特に恋愛面に関しては」

顔に苦笑を浮かべている宇都宮さんと、素子さんの視線を追いかけるように、ついに私は後ろをふり向いた。
その視線の先に見えた光景は・・・松本さんと姫路さんが、向かい合っておしゃべりをしている姿だった。

< 193 / 530 >

この作品をシェア

pagetop