純情シンデレラ
馬車に揺られて20分程経った頃、幸次郎伯父さん家族のペンション「コロボックル」に着いた。
街を歩く人たちの視線が恥ずかしかったことを除けば、とても快適なひと時だった。
それに、私は馬車には乗れる(馬にもだけど)と分かったことも、ちょっとした自信につながったような気がする。
でも、と思いながら、私は密かにため息をついた。
すでに披露宴(パーティー)は始まっているので、馬車で到着した私たちを、好奇心いっぱいの目で見ているゲストさんたちの視線をヒシヒシと感じるんですけど・・・。

私は極力ゲストさんたちと視線を合わせないよう、うつむき加減でサッサと歩きながら―――馬車の運転手さんには、ちゃんとお礼を言って、出迎えてくれた幸次郎伯父さんたちには、にこやかに挨拶をして―――用意されているいつもの部屋へ行った。

この時の私は、まさかこの場所で、あの人と再会するとは、想像すらしていなかった。

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