純情シンデレラ
「でな、母さんが“私も馬車に乗ってみたいわぁ”なんて言うもんだからよ、じゃあ恵子がここに来る時に馬車で迎えに行こうって話になったわけだ」
「ふぅん。そうだったんだ」
「それで?恵子。どう?馬車の乗り心地は」
「うん。思ったより揺れは少ないし、なかなか快適だよ。それに上が開いてるせいかな、街の景色もよく見えるし」
「今日もいい天気だからなぁ。良かった良かった」

・・・さっきお父さんは「母さんが馬車に乗ってみたいから」と言ったけど、それだけじゃなくて、少しでも私をいい意味で驚かせたくて、馬車の手配をしてくれたに違いない。
私は、本当に両親―――生みと育ての両方―――に恵まれた。

ニコニコ笑顔で頷くお父さんと、お父さんにつられるように、一緒に笑顔で頷いているお母さんを交互に見た私は、二人に「ありがとう」と言った。

< 238 / 530 >

この作品をシェア

pagetop