純情シンデレラ
『結婚、お断りすることはできないんですか』
『片っ端から断り続けてるよ。だから、そろそろ両親の堪忍袋の緒が切れる頃だろうな』と言った有栖川さんは、悲しい表情に苦笑を浮かべていた。

これが単なる“茶番劇”で、有栖川さんが出演者ではなく、それを眺めている観客だったらよかったのに―――。

不意に有栖川さんが、私の左肩に、自分の額を乗せた。
急なことでビックリしたけど、心が弱っている有栖川さんは、ただ心の支えを必要としているだけだと私は分かっていたので、邪険に扱ったりせず、お互いそのままの状態でいた。

『僕は、君を利用しようとした卑怯者だ。有栖川の家から逃れたい。ジャンがいるフランスに、また・・戻りたい』
『あ・・あの、恋人、いるんですか』
『・・・ああ』
『だったらご両親に話してみたらどうですか?きっと分かってくれる・・』
『言えるわけないだろ。相手は男だって・・僕は同性愛者だって、ずっと隠し続けてきた秘密を、誰にも・・家族には余計話せないよ』
『・・えっ・・・!?』

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