純情シンデレラ
私は病院が嫌いだ。「痛み」を思い出す場所だから。
だから病院に通う必要がなくなったときから、病院には極力近づかない、関わらないようにしてきた。
でも、久しぶりに病院に来ても、病院特有の薬っぽい匂いを感じても、すぐには、いや、全くといっていいくらいに、「痛み」を連想しなかった。

病院内に足を踏み入れたとき、まず思ったのは、「明るい」だった。
以前は、患者の気分を上げるような色で塗られた壁を見ても「暗い」イメージしか湧かなかったのに・・不思議。
不思議と言えば、忙しそうにキビキビと歩いている看護婦さんたちを見たとき、「そういえば、主治医の先生や私の担当だった看護婦さんたち、リハビリの先生(療法士)は、みんな私に優しかった」ということをまっ先に思い出したことも、不思議と言える。

10年ちょっとという月日の流れが、私の中で巣食っていた病院嫌いな気持ちを、自分でも気づかないうちに取り払ってくれたのか。
それとも、乗用車恐怖症同様、病院嫌いも「嫌い」な状態で留めていたから、自分で勝手に「嫌い」と思い込んでいただけだったのだろうか―――。

私は、(必要はなかったけれど)自分を勇気づけるように、持参した花束を一度だけギュッと握りしめると、姫路さんが入院している病室へ歩き出した。

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