純情シンデレラ
「え?」と私が思っている間に、その手は離れた―――少なくとも、触れられている感じはなくなった―――ので、気のせいだと思った。
さっき電車がカーブしたから、そのとき行き場をなくした誰かさんの手が、たまたま私の腿に当たっただけ。
そうよ。きっと。
だって、「腿」って言っても、スカートの上からだったし。
今は何も・・・あ。
あれ?また・・・?

今度は「たまたま」にしては、手の留まり具合が長すぎる・・気がする。
これは・・これって、もしかして・・・ち、痴漢じゃ・・・!?

内心パニックに陥った私に構わず、その手は私が着ているスカートの上から腿周辺を撫でるように触れ始めた。

間違いない。これは・・・痴漢だ!
と分かったものの、踏ん張り立っているので精一杯な今の状態では、防御することもできない。
足を踏んづけてやろうか・・やっぱりこれじゃあ無理。
身動きすることすらできない状態では、両手を動かすことも、ふり向くこともできない。

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